イザヤ書第17章
小山 文夫訳
1 *ダマスコに対する重い宣告
「見よ、ダマスコはもはや町ではなく
瓦礫の廃墟となる 2 *アロエルの町々は棄てられ
家畜の群れが伏すところとなり
脅かす者もゐない
3 *エフライムから砦が
ダマスコから王位が絶たれる
*アラムの遺れる者は
イスラエルの人々の栄光のやうになる」と
萬軍の主(ヤハウェ)の御告(みつ)げ
4 その日、ヤコブの栄光は弱まり
肉付きのよい体も痩せ細り
5 *刈り入れる者は立ち穂を集め
その腕が穂を刈り
*レファイムの谷で穂を拾ふやうになる
6 オリーブの実を打ち落とすやうに
*取り残した実がその中に 梢(こずえ)のてつぺんに二つ三つ
その枝に実り豊かな四つ、五つ残される
イスラエルのハアダム)はその造り主に目を注ぎ
その目はイスラエルの聖者を見つめ
8 手で作つた祭壇、その指が作つた物
アシュラとその香炉台を拝することはない
9 その日、要塞(ようさい)の町々は、イスラエルの子らが見捨て
荒れ地となつた*ホリ人やアモリ人の地のやうに
捨てられたものとになる
10 まことに汝は汝の救ひの神を忘れた
註
*1 「ダマスコ」 古代アラムの首都。
*2 口語訳、多くの英訳は70人訳に習つて「アロエル」を「永遠に」と読み替へて訳してゐ
るが、文語訳、新改訳、新共同訳、フランシスコ会訳も地名としてのアロエルを残してゐ
る。モアブにあるアルノン川北岸の町にその名が残つてゐるが、フランシスコ会訳の註で
は、歴史の流れからギリアドに隣接した場所と推測してゐる。 *3 「エフライム」 人
物名としてはヤコブの子ヨセフにはエジプトで生まれた二人の子があり、マナセとエフラ
イムである。(創四十六:20) 古代イスラエルが分 裂すると、北イスラエル王国の首都シ
ェケムに隣接する地にエフライムの領土があつた。初代北イスラエル王国の王ヤロブアム
一世はエフライム出身だつたので、BC.745 年頃から、北イスラエルはエフライムと呼ば
れるやうになつた。
*3 「アラム」אֲרָם 70人訳ではアラムを「スリヤ(シリア)」と訳してゐる。アラム人の
地。肥沃な三日月地帯を囲むヨルダン川の東岸流域およびパレスチナの北東部からチグ
リス・ユーフラテス流域に至るまでの地域。
*5 BHSはקֹצֵר「刈り入れる者」と読み替へることを提案してゐる。
*5 口語訳では「レパイムの谷」エルサレム南西にある。
*6 「取り残しの実」のイメージはミカ七:1、オバ5、エレ四十九:9、イザ二十四:13に
も見られる。
*9 マソラ本文のחֹרֶשׁ(ホーレシュ)「森」とאָמִיר(アミール)「梢」を多くの 現代語訳で
は古代ユダヤの注解、ミドラツシユの解釈や七十人訳に従つて、ヒビ人、アモリ人と読
み替へてゐる。