イザヤ書第20章
小山 文夫訳
1 アッシリアの王サルゴンが遣はした将軍(タルタン)がアシュドトを襲ひ、戦ひの末に町を占領した年、
2 主(ヤハウェ)はアモツの子イザヤの手によつて語られた。
「汝の腰から粗布を取り、
汝の足から汝の靴を脱げ」と。
そこで、彼は裸で裸足(はだし)になつて歩いた。
3 主(ヤハウェ)は言はれた、「わが僕イザヤが三年間、エジプトとクシユに対する徴、前徴として、裸、裸足で歩いたやうに、
4 アツシリアの王は、エジプトの捕虜、クシユの捕囚の民、若者も老人をも、裸、裸足で、エジプトの恥、尻を丸出しにして引き連れて行く。
5 彼らは期待してゐたクシユ、彼らの誇りであるエジプトに狼狽し、愕然とする」と。
6 その日、この海辺の住民は言ふ、「見よ、我らがアッシリアから逃れ、救われたいと期待したのに、この有様ではどうして我らは逃れ得やう」と。
註
1 サルゴン二世の治世はB.C.722~705頃で、この「年」はB.C.721年頃と思はれる。「アシュドト」はペリシテ人の町。ガザとヨッパの中間、地中海から内陸に五キロほど入つた場所と推定されてゐる。
2 「イザヤの手によつて」多くの訳がבְּיַד(ベヤッド)の「手で」を訳してゐないが、神の言葉の具体性を表すこのやうな言葉はきちんと訳す必要がある。出エ九:35にも「主(ヤハウェ)はモーセの手によつて語られた」といふ表現がある。